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赤い狐 生まれたときからずっと一緒に暮らしている姉は、年が明けるとすぐに、米寿を迎える。野良にこそ出られなくなったものの、洗濯や掃除など簡単な家事はしてくれる。口もまだまだ達者。話すのは、たいてい昔のことで、私が知らない遠い昔の話を千遍返し聞かせてくれる。 ところが、3歳の頃のことは匂いも色も鮮明に覚えているのに、現在のことになると、すぐに忘れる。遡る記憶が新しければ新しいほど、頭に留まっていないものらしい。風呂の水は出しっぱなし、ろうそくの火はつけっぱなし、そんなことが頻繁に起こる。祖母は80歳を過ぎてから、母も90歳を迎える頃から、呆けの症状が出始めたというから、姉に物忘れが出てきたとしても不思議ではないのだけれど。 昨夜、晩御飯を終えて、二人でストーブに当たっていると、その姉が突然妙なことを言い出した。 「狐がおる。」という。この辺には、時々狸が顔を出すことはあっても、狐がいるはずはない。 「どこに?」私が尋ねると、 「そこよ。」と、テーブルをあごでしゃくって言った。 「ほら、そこの皿の上よ。」 テーブルの上には、食べたばかりの空の皿が乗っているだけ。 「いよいよ、来るものが来たか?」 私は、内心そう思った。 姉は、人の心配をよそに、何食わぬ顔で、また言った。 「赤い狐がおるじゃろ?おまえにゃ見えんと?」 そこまで具体的に言うところをみると、間違いなく幻覚を見ているとしか思えない。 私の不安は、確信に変わっていった。 「狐を食わんか。ほら。」そう言って、姉は私の目の前に小皿を差し出した。 見ると、白い皿の上に、にんじんの切れ端がへばりついているのが見えた。よくよく顔を近づけて見ると、小さなイリコの目玉が二つ、薄くスライスされた人参の上に並んでいる。それが狐の顔に見えたとき、私はようやく姉にはめられた事を知った。先程からしきりに爪楊枝で皿を突いていたのは、狐の顔を描いていたのだ。 「まんまと騙したね。」と言うと 「騙したりしちょらんど。嘘はなーんも言うちょらんじゃろ?」 なるほど、確かに姉は本当のことしか口にはしていない。いっぱい食わされた私の完全な負けである。 そんな訳で、我が家の年寄り狐はまだまだしたたかだ。油断してると、こっちが騙されて泡を食う。妹と張り合い、猫の虎ちゃんと追いかけごっこをしているうちは、当分の間、まだ呆ける心配はなさそうである。 |
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文を読まずにこの写真を見たときは |
スリムー 2011/12/16 21:22 |
スリムーさん。こんばんわ。 |
ビキタロウ 2011/12/17 19:51 |
お姉さん・・・。アーチストですね |
さし絵テラ 2011/12/20 21:24 |
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